2007年02月06日

ドラマは、いらない。

裁判ものって、アメリカのお家芸。

だって、陪審員制でしょ。
一般から無作為に選ばれた人たちが、
被告の有罪か無罪かを決めるわけでしょ。
そりゃ、ドラマチックな展開がいくらでも予想される。

映画を観ていると、弁護人は裁判官ではなく、
陪審員を説得、というか納得させるために
(ほとんど)劇場的に熱弁をふるうわけですよ。
素人さんをいかに感動させて、共感をよんで、いかに説得するか。
その一点に集中する。
陪審員制度になじみもない日本国熊本の片田舎に住まう私にとって、
というか裁判自体のことを何にも知らない私にとって、
なんか、こう嘘っぽいというか、
無理に裁判をドラマ仕立てにしてしまう最近の裁判ものの映画って、
タイトル見ただけでうんざりしていた。


「それでもボクはやってない」

周防監督の11年ぶりの新作。前評判はまずまず良い。
久しぶりに(半年ぶりくらいかな)劇場に映画を観るってことで
「とりあえず観ておこう」的なノリでこの作品を選んだ。
日本の裁判について、ちょっとでも知識を入れておこうと、
北尾トロの裁判傍聴記「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」と、
この映画のもととなった痴漢えん罪事件本人による著書、
「お父さんはやってない」を読んで臨んだ。
この2冊は、日本の裁判を知るのにとてもいい教材。
特に後者は、被告人となった著者が無罪を勝ち取るまでを
本人の視点、家族(奥さん)の視点と、両面から時系列に綴られて
裁判がどのような手順で行われるのか、
それに関わる人(本人はもちろん、家族、支援者)が
どのような気持ちで裁判に臨んでいるのか。
そして、それがどれだけ長い時間が費やされているのか。
日本の裁判システムの問題を浮き彫りにしていた。

殺人でもなく、強盗でもなく、痴漢。
誰の身にも起こりうる事件を取り上げているところがいい。
スクリーンの向こうのお話で終わらず、
身近な題材、余白をもった淡々とした演出によって、
考える余地を与えてくれる。
決してドラマチックな展開があるわけでもない。
わけのわからん言葉を並べて
検事も弁護側も、裁判官も、事務的に裁判を進行しているという印象。
実際の裁判も、あんなもんなんだろうな。
アメリカの裁判ものと違うのは、みんな裁判官の方を向いている。
セリフにもあるのだが、
「裁判は私(裁判官)のもの」
というのがよく理解できた。

そして、加瀬亮。
彼がホントにいい味出している。
飲み会の席で、
「ちょっと悲しそうな永瀬っぽい」
と女の子から指摘されて、
ちょっと調子に乗ってしまうような、
そんなどこにでも居そうな男っぷりがいい。

邦画の興行収益が上がっているそうだけど、納得。
最近の邦画は、ハリウッドものよりも数倍おもしろい。

周防監督は、
「日本の裁判の現実をどうやったら伝えられるか。
 それしか考えてなかった。」
とコメントしているが、この映画は確実にその目的を果たしていると思う。
少なくとも、私にとっては。

posted by さとる at 23:11| 熊本 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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